障害者サービスの始め方
- PRの方法、具体的サービス事例、アクセシビリティを中心に-
2018.11.21
杉田正幸
(大阪府立中央図書館、日本図書館協会障害者サービス委員会関西小委員会委員長、日本図書館協会認定司書第1138号)
他の資料
1. 障害者サービスを開始するための準備
1-1. 職員全体のサービス理解
都道府県立図書館の研修会や自治体内での研修会、関連する参考書籍での理解を図る
参考:研修会支援企画「開こう! 障害者サービス研修会」のご案内
参考:関連書籍:障害者サービス(作成中)
参考:大阪公共図書館協会 平成30年度障がい者サービス研修(基本研修)
参考:平成30年度大阪公共図書館協会「障がい者サービス実務研修」
参考:大阪府内市町村図書館等障がい者サービス情報交換会
参考:平成30年度 大阪府立図書館「出前講習」
参考:大阪府立中央図書館 要覧2018 電子版
参考:大阪府立中央図書館要覧2017 障がいのある人へのサービス 平成28年度 - 大阪府立図書館
参考:大阪府立中央図書館要覧2017 講師派遣 平成28年度 - 大阪府立図書館
参考:大阪府立中央図書館要覧2017 研修 平成28年度 - 大阪府立図書館
1-2. 情報収集
1-3. 先進館から学ぶ
見学・相談、都道府県立図書館の障害者サービス担当に問い合わせる
主な障害者サービスの事例:http://www.j7p.net/ronbun/jirei.html
1-4. 自館の状況から考える
施設・設備、職員、資料の状況からおこなうべきサービスを考える
1-5. 地域の利用者の状況から考える
人口・高齢化や障害者の状況などの地域の特性、特別支援学校の有無、障害者関連施設の有無などから考える
1-6. 関連する法規やガイドライン
著作権法、郵便規則 各種約款(日本郵便)、図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン 補記:(障害保健福祉研究情報システム(DINF))、録音(DAISY)資料製作に関する全国基準、公共図書館の障害者サービスにおける資料変換に係わる図書館協力者導入のためのガイドライン、図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン
1-7. 実施計画や規則などの作成
- 実施プログラムの作成(サービスの内容、資料の購入・寄贈・相互貸借、資料製作、職員全体の役割分担、図書館協力者やボランティアとの連携など)
- 予算化(施設設備の整備、障害者サービス資料や機器類の購入)
- 障害者サービスの規則、要項等の整備
1-8. 障害者サービスの利用案内の作成
どのようなサービスや資料が利用可能かを説明(墨字版・拡大文字版・点字版・カセットテープ版・DAISY版・LL版・映像版・字幕入り版・手話入り版・ホームページでの利用案内など)
1-9. 障害者サービスのPR
- 広く一般の人に障害者サービスをPRして口コミで利用してもらう(ホームページでの広報、障害者サービスの利用案内を様々なところに置く)
- 市役所の福祉担当、ケースワーカー、福祉関係者、障害者団体、特別支援学校、養護施設、高齢者施設、ボランティア、ヘルパーなどへのPR
- 墨字版・点字版・録音版の市報への掲載、マスコミを通じての宣伝
- 福祉団体の発行する会報などでの障害者サービスの広報
- 障害者団体の行事や集まりがあれば図書館から担当者が出向き、障害者サービスの利用説明をおこなう
- 障害者への直接PR(口コミなどを含む)
- 障害者サービス資料の展示会や機器体験会、障害者向けの図書館活用講座の開催、バリアフリー映画会の開催など
2. 『図書館利用に障害のある人々へのサービス』のアクセシブルな電子版について
2-1. 概要
電子書籍版の販売(2018年12月を予定)
ダウンロード版:アンテナハウス オンラインショップ(購入には会員登録が必要)
https://web.antenna.co.jp/shop/html/products/list.php?category_id=156
メディア版:CDにて日本図書館協会から発売(予定)
形式:アクセシブルな電子版(リフロー型のEPUB 3形式)
作成:デジタル出版物制作Webサービス「CAS-UB」にて特定非営利活動法人支援技術開発機構「ATDO」が作成
2-2. 他の電子書籍にない特徴
(1)他の電子書籍などに通常かけられているDRM(デジタルコンテンツの著作権を保護するために、その利用や複製などを制限する技術)をかけていないので、データの提供側のサービス中止などによって、再生が不可能になるというような心配がない。
(2)視覚障害者もわかるよう、図や写真には代替テキストで説明がある。
(3)原本のページ番号が挿入されているので、どちらを利用していても齟齬がない。
2-3. 電子書籍版の音声読み上げでの紹介
(1)iPhone 8:iOS 12.0 + VoiceOverと「Dolphin EasyReader」(Dolphin Computer Access Ltd)
(2)Windows 10のPC:
・スクリーンリーダーとして「Windows 10 ナレーター」(マイクロソフト)、デスクトップ & モバイル向け Web ブラウザ「Microsoft Edge」(マイクロソフト)の組み合わせ
・スクリーンリーダー「PC-Talker 10」(高知システム開発)と「MyBookX」(高知システム開発)の組み合わせ
(3)「プレクストークPTR3」(シナノケンシ)
3. 電子書籍のアクセシビリティ
3-1. 障害者の電子書籍へのアクセス
- 電子書籍サービスに必要な機能:テキスト形式での出力,音声読み上げ機能、文字拡大機能、文字と地の色の反転機能、マルチメディア機能(映像や音声)、点字ディスプレイへの出力機能
- 現在の電子書籍の主な環境:iPhoneやiPadなどのiOS端末やAndroid端末が中心で、パソコンや従来の携帯電話での利用を想定していないものが多い
- 視覚障害者の電子書籍購入サイトの現状:Kindle(電子書籍)やaudiobook.jp(オーディオブック定額制)など限られた利用が中心
- 公共図書館での障害者の電子書籍の利用は現状ではほとんどない
- 公共図書館の電子書籍サービスのアクセシビリティは実験段階以下の状態
3-2. 公共図書館の電子書籍サービス‐障害のある利用者からの視点
- コンテンツが少なく、古いものばかりで、サピエ図書館ほどの魅力を感じない
- 日本語の音声読み上げには誤読が多く専門書の場合、理解することが難しい
- 合成音声による読み上げを長く聞いていると疲れる
- テキスト抽出できないと点字表示を用いて利用する視覚障害者や盲ろう者がアクセス困難
- 1文字ずつ音声や点字で漢字の確認ができない
- 閲覧ソフト(ビューア)が使いにくい
- DAISYのように検索や見出しやページへのジャンプが自由にできない
3-3. 筆者の使用したことのあるもしくは過去に使用した公共図書館の電子書籍サービス
4. ICTを活用した障害者サービス
5. 参考URL