障害者サービスの始め方
- PRの方法、具体的サービス事例、アクセシビリティを中心に-
2015.11.17
杉田正幸(大阪府立中央図書館)
1. 障害者サービスを開始するための準備
1-1. 職員全体のサービス理解
都道府県立図書館の研修会や自治体内での研修会、関連する参考書籍での理解を図る
参考:研修会支援企画「開こう! 障害者サービス研修会」のご案内
参考:関連書籍:障害者サービス(作成中)
参考(終了分):大阪公共図書館協会 平成27年度障がい者サービス研修(基本研修)(ファイルは1週間以内に削除します)
参考:平成27年度大阪公共図書館協会「障がい者サービス実務研修」(ファイルは1週間以内に削除します)
参考:大阪府内市町村図書館等障がい者サービス情報交換会(ファイルは1週間以内に削除します)
参考(終了分):「障害者サービスをイロハから学びませんか! 障害者サービス基礎講習会」のご案内(終了しました)
1-2. 先進館から学ぶ
見学・相談、都道府県立図書館の障害者サービス担当に問い合わせる
主な障害者サービスの事例:http://www.j7p.net/ronbun/jirei.html
1-3. 自館の状況から考える
施設・設備、職員、資料の状況からおこなうべきサービスを考える
1-4. 地域の利用者の状況から考える
人口・高齢化や障害者の状況などの地域の特性、特別支援学校の有無、障害者関連施設の有無などから考える
1-5. 関連する法規やガイドライン
著作権法、郵便規則、図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン 補記:(障害保健福祉研究情報システム(DINF))、録音(DAISY)資料製作に関する全国基準、公共図書館の障害者サービスにおける資料変換に係わる図書館協力者導入のためのガイドライン、合理的配慮に関するガイドライン(日本図書館協会 障害者サービス委員会で作成中)
1-6. 実施計画や規則などの作成
- 実施プログラムの作成(サービスの内容、資料の購入・寄贈・相互貸借、資料製作、職員全体の役割分担、図書館協力者やボランティアとの連携など)
- 予算化(施設設備の整備、障害者サービス資料や機器類の購入)
- 障害者サービスの規則、要項等の整備
1-7. 障害者サービスの利用案内の作成
どのようなサービスや資料が利用可能かを説明(墨字版・拡大文字版・点字版・カセットテープ版・DAISY版・LL版・映像版・字幕入り版・手話入り版・ホームページでの利用案内など)
1-8. 障害者サービスのPR
- 広く一般の人に障害者サービスをPRして口コミで利用してもらう(ホームページでの広報、障害者サービスの利用案内を様々なところに置く)
- 市役所の福祉担当、ケースワーカー、福祉関係者、障害者団体、特別支援学校、養護施設、高齢者施設、ボランティア、ヘルパーなどへのPR
- 墨字版・点字版・録音版の市報への掲載、マスコミを通じての宣伝
- 福祉団体の発行する会報などでの障害者サービスの広報
- 障害者団体の行事や集まりがあれば図書館から担当者が出向き、障害者サービスの利用説明をおこなう
- 障害者への直接PR(口コミなどを含む)
- 障害者サービス資料の展示会や機器体験会、障害者向けの図書館活用講座の開催、バリアフリー映画会の開催など
2. 視覚障害者のインターネット利用環境
2-1. スクリーン・リーダー(画面読み上げソフト)
通常のブラウザ「Internet Explorer」との組み合わせ。
主なソフト名:PC-Talker(高知システム開発)、JAWS(エクストラ、フリーダムサイエンティフィック(アメリカ))、FocusTalk(スカイフィッシュ)、NVDA日本語版(NVDA日本語版開発チーム)
2-2. スクリーン・マグニファイアー(画面拡大ソフト)
通常のブラウザ「Internet Explorer」との組み合わせでも画面拡大は可能だが、特に重度の弱視の場合は専用の拡大ソフトを用いる。
主なソフト名:ZoomText Magnifier(アメディア)
2-3. 音声ブラウザ
ブラウザ専用なので、ナビゲーションなど操作に優れる。
主なソフト名:ネットリーダー(高知システム開発)、Altair(日本障害者リハビリテーション協会)
2-4. 読書専用ソフト
サピエや国立国会図書館のDAISY・点字データ閲覧とダウンロード、PDFやEPUBの閲覧など読書専用に作られたソフト。
主なソフト名:MyBook V(高知システム開発)
2-5. ウェブスクレイピングを用いたソフト
インターネットの情報をウェブスクレイピング(Web scraping)して、必要な内容のみを抽出して表示。
主なソフト名:サーチエイド、ボイスポッパー(桂木範・オンラインソフト工房)、マイニュース、マイディック(高知システム開発)
2-6. iPadやiPhoneなどのiOS製品やAndroid系の端末(補記:アクセシビリティ - iOS - VoiceOver - Apple(日本)、●「見えなくても使えるiPhone ? ボイスオーバーでの操作解説(iOS 7編)」
2-7. らくらくホンなどのガラケー
2-8. ブレイルセンス(補記:ブレイルセンスU2日本語版、ブレイルセンスオンハンド日本語版U2ミニ)などの点字携帯情報端末
3. ホームページのアクセシビリティ(ウェブ・アクセシビリティ)
3-1. ウェブ・アクセシビリティのガイドラインと企画
・高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ JIS X 8341-3:2010
http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/Com/FlowControl.jsp?lang=jp&bunsyoId=JIS+X+8341-3%3A2010&dantaiCd=JIS&status=1
3-2. 図書館サイトのアクセシビリティ
視覚障害者に対してはおおよそ、下記のような配慮をおこなう。
- 画像や音声などには代替テキストによる注釈をつける
- すべての要素をキーボードで指定できるようにする
・単語や熟語の途中に改行やスペースを挿入しないようにする
- 音声ソフトを使っても理解可能な表を作成する
- スタイルシートなしでも読めるようにする
- フレームやジャバスクリプトは極力使用しない
- 自動的にページの移動やリフレッシュはさせない
- ナビゲーションをスキップして本文へジャンプできる機能を用意する
- 色の情報に頼らずに理解できるようにする
- 文字サイズを固定せず拡大・縮小できるようにする
- ちらつき・点滅・移動はさせない
3-3. Web OPACのアクセシビリティ
視覚障害者にはおおよそ、下記のような配慮をおこなう。
3-4. ウェブ・アクセシビリティの評価方法
3-5. ウェブ・アクセシビリティの点検ツール
3-6. A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査 図書館編
http://www.aao.ne.jp/research/cronos2/2010_library/
画像代替(画像に対する代替テキストの付与状況)および構造化(見出し、箇条書きなど文書構造に関するHTMLの記述状況)を中心に2010年8月に調査を実施。
調査対象は、都道府県、政令指定都市、中核市、東京都内市区町村の中央図書館のウェブサイト。自治体公式ウェブサイトよりも到達レベルが低い団体が多い。
蔵書検索・予約システムについてアクセシビリティ対応が不十分な場合が多い。
4. 電子書籍のアクセシビリティ
4-1. 障害者の電子書籍へのアクセス
- 電子書籍サービスに必要な機能:テキスト形式での出力,音声読み上げ機能、文字拡大機能、文字と地の色の反転機能、マルチメディア機能(映像や音声)、点字ディスプレイへの出力機能
- 現在の電子書籍の主な環境:iPhoneやiPadなどのiOS端末やAndroid端末が中心で、パソコンや従来の携帯電話での利用を想定していないものが多い
- 視覚障害者の電子書籍購入サイトの現状:Kindle(電子書籍)やAudible(オーディオブック定額制)など限られた利用が中心
- 公共図書館での障害者の電子書籍の利用は現状ではほとんどない
- 公共図書館の電子書籍サービスのアクセシビリティは実験段階以下の状態
4-2. 公共図書館の電子書籍サービス‐障害のある利用者からの視点
- コンテンツが少なく、古いものばかりで、サピエ図書館ほどの魅力を感じない
- 日本語の音声読み上げには誤読が多く専門書の場合、理解することが難しい
- 合成音声による読み上げを長く聞いていると疲れる
- テキスト抽出できないと点字表示を用いて利用する視覚障害者や盲ろう者がアクセス困難
- 1文字ずつ音声や点字で漢字の確認ができない
- 閲覧ソフト(ビューア)が使いにくい
- DAISYのように検索や見出しやページへのジャンプが自由にできない
4-3. 筆者の使用したことのあるもしくは過去に使用した公共図書館の電子書籍サービス
5. ICTを活用した障害者サービス
6. 参考URL