視覚障害者のiPad/iPhoneによるVoiceOver活用
(障害者へのICT活用研修会 視覚障害通常研修)

杉田正幸


平成29年度パソコンボランティア指導者養成事業 障害者へのICT活用研修会

1. ハードウェア


(1) iPhone 3GSから最新のiPhone 7 (ソフトバンク、au、ドコモ)
(2) iPad初代以降, iPad mini 第1世代以降(アップル、ソフトバンク、au、ドコモ)
(3) iPod touch第4世代以降(アップル)

2. 外付けキーボードやテンキーなど


(1)操作を補助する装置:Rivo(リボ)(日本テレソフト) 発売終了
(2)市販のBluetooth外付けキーボードなど:購入の際にはキーの数、キーピッチなど使い勝手を考慮に入れる。
※参考:筆者の使用しているキーボード:ロジクール ウルトラスリム キーボード ミニ TM710BK

バッファロー BluetoothR3.0対応 折りたたみキーボード ケース付き 「BSKBB15BK」

3. 基本ソフト(OS)


iOS 10に標準搭載のスクリーン・リーダー「VoiceOver」

4. iOSのアクセシビリティ機能(音声・拡大・点字のみ紹介)


iOSの現バージョン9.1には様々なアクセシビリティ機能が標準搭載されている。
アップル - アクセシビリティ - iOS
(1)スクリーン・リーダー「VoiceOver」
(2)音声認識・音声入力「Siri」
(3)画面拡大「ズーム」
(4)点字表示「ブライユ点字ディスプレイ」
アップル - アクセシビリティ - iOS - ブライユ点字ディスプレイ

5. アクセシビリティ機能の設定


(A)障害者が使用するためのiOSの各種設定:「設定」をタップ→「一般」をタップ→「アクセシビリティ」をタップ。
(1)「視覚サポート」:「VoiceOver」の読み上げに関する設定、「Zoom機能」の画面拡大に関する設定が可能
(2)その他のアクセシビリティ設定:聴覚サポート、学習サポート、身体機能サポート
(3)ショートカット設定:VoiceOver、色を反転、グレイスケール、ズーム機能、スイッチコントロール、Assestevetouchの6種類からVoiceOverを選択
(B)VoiceOverのON/OFF:上記の設定画面を開かずに以下の方法でも可能
(1)ホームボタンのトリプルクリック
(2)パソコンとiPadを接続してiTunesにて設定
アップル - iTunes - iTunesを今すぐダウンロード
(C)スクリーンカーテンのON/OFF:画面を消した状態でiPadを操作
3本の指でトリプルタップ

6. VoiceOverの操作練習(ジェスチャー)


「設定」をタップ→「一般」をタップ→「アクセシビリティ」をタップ→「VoiceOver」をタップ→「VoiceOverの操作練習」をタップ
主なジェスチャー
(1)タッチ(画面に指を付ける):項目を選択し読み上げ
(2)タップ(画面を軽くたたく):
(A)シングルタップ(1回):2本指は音声読み上げの一時停止と再開、3本指は画面位置の読み上げ
(B)ダブルタップ(2回):1本指は項目の実行、2本指はメディアの実行(音楽の再生・停止や電話の切断など)、3本指はボイスオーバー音声の読み上げのON/OFF
(C)トリプルタップ(3回):1本指は一般のジェスチャーのダブルタップと同じ、2本指は"画面に表示されている項目をアルファベット順に並べ替えて表示、3本指はスクリーンカーテンのオンとオフ
(D)スプリットタップ(1本の指で目的の項目にタッチし、もう1本の指を画面のどこでもよいのでタップ):1本指は項目の実行
(3)フリック(指で画面についた埃を跳ね飛ばすようにする)
(A)右フリック・左フリック:1本指は前・次の項目へ移動、3本指は前・次のページへ移動。
(B)上フリック・下フリック):1本指はローター項目で指定した前・次の要素に移動、2本指で上フリックは全文読み、下フリックは現在位置から全文読み、3本指は画面を上・下へスクロール
(4)その他、ピンチイン、ピンチイン&ピンチアウト、ローター、スクラム、ホールドなど
(A)ピンチイン(親指と残り4本の指を広げたまま画面につけて、それぞれの指をくっつける):ホーム画面の表示(iPadのみ)
(B)ローター(2本指を画面につけたままでダイヤルを時計回り、反時計回りに回すように滑らせる):ローター項目の変更
(C)スクラブ(2本指を画面にタッチしたままでスッスッスッと3回擦るように動かす):直前の画面に戻る
(D)ホームボタンのダブルクリック:起動しているアプリの一覧を確認し、目的のアプリを実行
(E)ホームボタンのトリプルクリック:アクセシビリティ設定のショートカットキーで登録した機能のON/OFF
参考:見えなくても使えるiPhone -- ボイスオーバーでの操作解説(品川博之さん作成)

7. VoiceOverの操作練習(キーボード)


(1)矢印キー
(2)ホームキー、エスケープキー、タブキー
(3)オプションキー、コマンドキー、コントロールキー等との組みあわせ

8. Safariでの主なキーボードショートカットキー(インターネット)


(1)H:次の見出しへ
(2)L:次のリンクへ
(3)R:次のテキストフィールドへ
(4)S:次のテキスト要素へ
(5)T:次のテーブルへ
(6)B:次のボタンへ
(7)C:次のホームコントロールへ

9. VoiceOverに対応した電子書籍サービスと対応アプリ


(1)アマゾン「Kindleストア」(日本語タイトル約38万冊):Kindle for iOS(Kindle 電子書籍リーダー)(2013年5月1日に公開の3.7から読み上げ対応)
参考:Amazon.co.jp: Kindle Unlimited:読み放題ストア: Kindleストア
参考:Kindleアプリの読書中に使えるボイスオーバーのジェスチャー: Voice of i -- iPhoneやiPadを音声読み上げで使ってみれば
参考:iOS版Kindleアプリ、アップデートで視覚障害ユーザー向け読み上げ機能をサポート - ITmedia ニュース
参考:Amazon.co.jp ヘルプ: 本を読む
参考:Amazon.co.jp ヘルプ: 画面読み上げ機能VoiceOver
参考:Kindleストア の ベストセラー
参考:Kindleストア の 新着ニューリリース
(2)アップル「iBooksストア」(日本語タイトル約数十万冊):iBooks(2013年3月5日の日本でのストア開始と同時で、3.1から読み上げ対応)
(3)Voice Dream LLC「Voice Dream Reader - Text to Speech」 (日本語) 1,800円
参考:日本語の電子書籍も朗読してくれるiOS用音声朗読アプリ「Voice Dream Reader」、DAISYオーディオブックに対応(hon.jp DayWatch)

補記 Windows等に対応した電子書籍関連のソフトなど


(4)MyBookV
参考:サピエ図書館
参考:国立国会図書館サーチ
(5)T-Time5.5(ボイジャー)と電子かたりべ(アルファシステムズ)を連動

10. DAISY再生アプリ


(1)CYPAC「VOD(Voice of DAISY)」(日本語) 3,100円
(2)シナノケンシ「いーリーダー」(日本語) 3,000円
(3)Benetech「Read2Go」(英語) 2,400円
(4)New Braille System K.K.DAISY Talk()(日本語) 3,100円

11. オーディオブックサービスと対応アプリ


(1)オトバンク「FeBe」(日本語タイトル約1万5千冊):KikuPlayerFeBe - オーディオブックアプリ
(2)アマゾンAudible(オーディブル)(日本語タイトル約数千冊):Audible (オーディブル) - 本を聴こう
参考:神様のカルテ

12. 辞書・辞典


(1)対応辞書形式:EASTの「デ辞蔵形式」、Keisokugikenの「Oneswing形式」、NECの「BIGLOBE辞書形式」がVoiceOverで利用可能
(2)対応辞書・辞典アプリ:「広辞苑第六版」(岩波書店)、「大辞林」(三省堂)「現代用語の基礎知識2016」(自由国民社)、「最新医学大辞典第3版【医歯薬出版】(ONESWING)(Keisokugiken Corporation)」「南山堂医学大辞典 第19版」(南山堂)、「鍼灸医学大辞典」(医歯薬出版)、「新英和中辞典第7版・新和英中辞典第5版」(研究社)など
(3)アクセント辞典(発音を音声で聞くことができる):「NHK日本語発音アクセント辞典 新版」(デ辞蔵形式)、「三省堂新明解国語辞典 第七版」(NECのBIGLOBE形式)、「新明解国語辞典 第七版」(ONESWING形式)、「新明解国語辞典 第七版 発音音声付き」(物書堂)

13. その他で、VoiceOverで利用可能な主な無料のアプリ


アプリ名 アプリの説明
視覚障がい者向け使い方教室 for iPhone(SoftBank Corp.) 視覚障がいのある方がiPhoneを使えるようになることで、新しい世界を拡げていただくためのアプリ。ボイスオーバーの基本的な操作方法を学習し練習することで、操作に慣れていただくことができる。
Barcode-Talker Next for iPhone(Tomohiro Haraikawa) 商品のバーコードをスキャンして、その商品情報を案内するアプリ。視覚障害者はJICFS/IFDB と Webデータベースから商品の詳細情報を確認可能
Twitter(Twitter, Inc.) ソーシャルネットワーキング。今ある写真や動画、ニュースのリンクや様々なアイデアをタイムラインに投稿。気になる人や物をフォロー
Facebook(Facebook, Inc.) ソーシャルネットワーキング。友達が何をしてるかをチェック、自分の投稿への友達の「いいね!」やコメントに関する通知を受信、テキストメッセージやチャット、グループ会話など
Skype(Skype Communications S.a.r.l) Skypeを使っている相手と、無料で音声通話やビデオ通話が可能、インスタントメッセージ(IM)の送信、ビデオメッセージ、写真共有、携帯電話や固定電話と通話(有料)など
Chrome(Google, Inc.) Googleが開発したブラウザ。音声検索、テキスト読み上げに対応。
Adobe Reader(Adobe) PDF 文書の表示、編集用の公式アプリ。VoiceOver Accessibilityで音声読み上げが可能。
TapTapSee(Net Ideas, LLC) 視覚障害者向け画像認識カメラ
Be My Eyes - helping blind see(Be My Eyes) 視覚障害者をカメラの相手がサポートするアプリ
新聞読み比べ(Hirota Inoue) 主要全国紙のホームページから配信される最新のニュースを閲覧
毎日のニュース - Newsdaily for iOS(Nobuyuki Kondo) RSSリーダーのような見ためのニュースアプリ。世界の70の地域、28の言語から25000のニュースソースを利用可能。キーワード入力による検索機能、記事のローカルディスクへの保存、関心のあるキーワードをカテゴリーとして登録、SNSへの投稿などが可能。
そら案内(feedtailor Inc.) 日本気象協会が提供する気象情報に基づき国内各地の天気予報を表示するアプリ。市区町村単位での天気予報、向こう1週間の天気予報、直近2日間は3時間毎の詳細な気象情報(気温/降水量/湿度/風向/風速)、今日・明日、及び一週間先の概況文、注意報・警報など。2013年7月28日のバージョンアップで、VoiceOverによる天気読み上げ対応。
iMove(EveryWare Technologies) - 視覚障害者の移動を補助するアプリ(現在地の住所を知る、現在地周辺の施設の情報を得る、位置情報と紐付いた音声メモを録音する)
てくてくナビ(PROJECT YUAI, N.P.O.) 視覚障がい者など歩行に困難を抱える方向けの歩行移動支援アプリ。 自分がこれから行きたい、と思う施設を入力すると、その施設までの方向、距離を震動と音声ガイダンスとで説明。
Google Maps(Google, Inc.) 220の国と地域を広くカバーした精密な地図。運転、自転車、徒歩用の音声ガイド付きGPSナビ。? 15,000を超える都市や町の乗換案内と地図。BlindSquareなどの視覚障害者用GPSアプリと一緒に用いると目的地までのナビが簡単に可能
振動コンパス(Amedia Corporation) 方角を振動と音声で通知するアプリ。VoiceOver対応。
写真を翻訳 フリー ? テキストに写真を変換しの言語に翻訳を(Volgan Shpitz) あらゆる印刷されたソースからテキストを抽出:ドキュメント、本、署名、説明書、あるいは発表。そして、90言語のうちのいずれかにそれらを即時に翻訳。
言う吉くん(NATIONAL PRINTING BUREAU.) 内蔵カメラを使って紙幣を映すだけで、その額面を音声や画面でお知らせ。主に、目の不自由な方にとって、紙幣の額面を確認する補助的な役割を果たします。
Move&Flick(株式会社NTTドコモ) 手元を見なくてもかんたんに文字を入力することが出来るアプリ。入力スペースのどこからでも文字入力を開始することが可能。
radikker(iside system) radiko、らじる★らじるのIPサイマル放送とtwitterを同時に楽しむことの出来るアプリ
YouTube(Google, Inc.) iOS 向け公式 YouTube アプリで世界中の動画やお気に入りの YouTube チャンネルを利用可能
デ辞蔵【国英和Wiki+AddOn機能】(EAST Co., Ltd.) デイリーコンサイス国語辞典、デイリーコンサイス英和辞典、デイリーコンサイス和英辞典、日本語ウィキペディアの4つのネット辞書が無償ですぐに利用可能。オフラインで使える辞書(30製品)をアプリ内課金で追加購入できる辞書アプリ

14. その他で、VoiceOverで利用可能な主な有料のアプリ


アプリ名 アプリの説明
Voice Dream Reader - Text to Speech(Voice Dream LLC) PDF,Text、Word,PowerPoint,RTF,Apple Pages,HTML,DRM-free ePub,text-based DAISYを20カ国の言語(英語・日本語など)、78種類の音声で読み上げ
BlindSquare(MIPsoft) GPSとコンパスを使用して現在地を取得。Foursquareのデータベースにアクセスし、周囲の施設の情報を収集。連絡先を入手、Twitterのフィードやお店のメニューを開く、電話をかける、目的地に設定する、ルート案内(Google Maps、Apple Map、Motion X、TomTomおよびNavigonに対応)
iよむべえ(Amedia Corporation) 活字文書の認識および読み上げをおこなうアプリ。視覚障害者向け。iよむべえ は、メディアドライブ社(日本)の認識エンジンを採用。
Amedia Live Reader(Amedia Corporation) カメラで撮影した画像に含まれている文字をリアルタイムで読み上げ。視覚障害者向け。対応言語は日本語, 中国語 (簡体), 中国語 (繁体), 韓国語, 英語, ドイツ語, フランス語, スペイン語, イタリア語, ポルトガル語, インドネシア語。ABBYY社による OCR技術を採用。
写真を翻訳 - Cam,PDFドキュメントスキャナ、OCR、テキストグラバーと翻訳(Volgan Shpitz) あらゆる印刷されたソースからテキストを抽出:ドキュメント、本、署名、説明書、あるいは発表。そして、90言語のうちのいずれかにそれらを即時に翻訳。
LookTelマネーリーダー(IPPLEX) 通貨を瞬時に認識し、紙幣の額面金額を読み上げ。20カ国の通貨に対応。
乗換案内Plus(Jorudan Co.,Ltd.) 経路検索でおなじみのアプリ「乗換案内」の機能を大幅に強化したアプリ。運行情報メール、乗換が便利な乗車位置(号車)、発着ホーム番線、各停を優先する検索、乗換時間の設定、定期代検索、バス検索、経路検索、時刻表閲覧など

参考:iTunes App Storeの中でVoiceOverで利用可能なアプリ (iPhone,iPadなどで視覚障害者に利用可能なアプリ)(杉田正幸)

参考:VoiceOverに関連するホームページ


(1)アップル - アクセシビリティ - iOS - Apple(日本) http://www.apple.com/jp/accessibility/ios/
(2)日本ライトハウス情報文化センター − 情報機器関係資料 見えなくても使えるiPhone - ボイスオーバーでの操作解説
http://www.iccb.jp/salon/ref/
(3)iTunes App Storeの中でVoiceOverで利用可能なアプリ(iPhone,iPadなどで視覚障害者に利用可能なアプリ)
http://www.j7p.net/itunes/


その他のホームページ


iPhone、iPad用・障害のある人に便利なアプリ一覧
Android携帯用・障害のある人に便利なアプリ一覧


「視覚障害者のiPad/iPhoneによるVoiceOver活用」 日本障害者リハビリテーション協会 パソコンボランティア指導者養成研修 障害者へのICT活用研修会 通常研修レジュメ
URL: http://j7p.net/ronbun/pcv2017iPad.html
掲載日:2016年9月17日  最終更新日:2017年11月14日