大阪府立中央図書館におけるDAISY図書の活用


2017.5.28



大阪府立中央図書館 杉田正幸



1. 当館のDAISY所蔵数


(1)当館購入・寄贈分702タイトル(内、マルチメディアDAISY259タイトル)


※マルチメディアDAISYは日本障害者リハビリテーション協会からの購入、日本ライトハウス情報文化センターからのダウンロード、サピエ図書館からのダウンロード、伊藤忠記念財団「わいわい文庫」の寄贈など
※音声DAISYは「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」(2013年9月2日別表一部修正)→「別表3著作権法第37条第3項ただし書該当資料確認リスト」の出版施設からの購入が中心(オフィス・コア金曜日など)
最近8年の受入点数:2009年度 49タイトル、2010年度 73タイトル、2011年度 67タイトル、2012年度 46タイトル、2013年度 126タイトル、2014年度 55タイトル、2015年度 35タイトル、2016年度 74タイトル
DAISY図書所蔵目録(大阪府立図書館)

(2)当館製作分(音声DAISYのみ)355タイトル


※利用者から製作希望のあるものの内、全国貸出でそれなりの利用が想定されるもの。特に、大阪関係の資料(なにわ塾叢書)、自然科学(医学)や社会科学などの専門的な資料、iPhoneやパソコン関連の資料をこれまでに製作。
最近8年の受入点数:2009年度 3タイトル、2010年度 11タイトル、2011年度 24タイトル、2012年度 31タイトル、2013年度 44タイトル、2014年度 34タイトル、2015年度 39タイトル、2016年度 35タイトル
DAISY図書所蔵目録(大阪府立図書館)

2. 当館のDAISYに関する歴史


2000年12月:当館の音訳協力者を対象にDAISY製作講習会を開催。以降、数年間は不定期に開催。
2001年7月31日:マルチメディアDAISY図書の購入・寄贈受入開始
2002年度:当館カセットテープ蔵書42タイトルとなにわ塾叢書35タイトルを外部の製作団体に委託してDAISY製作
2003年4月30日:通信放送機構(TAO)「大阪府マルチメディア・モデル図書館展開事業」の一環として、「録音図書ネットワーク配信(実証実験)」を開始
2003年度から2007年度:DAISY図書を外部の製作団体に委託して製作
2006年10月:TAO継続事業として、「DAISY録音図書ネットワーク配信サービス」を継続
2009年3月31日:「DAISY録音図書ネットワーク配信サービス」終了
2009年6月25日:DAISY所蔵目録(当館購入・寄贈分)点字版DAISY所蔵目録(当館製作分)点字版をホームページに掲載
2009年7月19日:マルチメディアDAISY所蔵目録をホームページに掲載
2010年1月:改正著作権法が施工→障害者のための著作物利用に係る権利制限の範囲の拡大
2010年度より:公共図書館がDAISY図書の作成に許諾が必要なくなったため、当館でも本格的にDAISY蔵書製作を開始
2011年5月20日:DAISY図書所蔵目録のホームページを公開
2014年1月27日:国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービス開始。当館製作のDAISY図書コンテンツをすべて国立国会図書館に提供し、配信開始。
2014年6月3日:国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスで配信されているコンテンツがサピエ図書館からも利用可能になる

3. 当館DAISY図書の利用方法


(1)購入・寄贈分



(2)当館製作分



4. 課題


(1)DAISY図書、特にマルチメディアDAISY図書の出版がほとんどなく、公共図書館で入手し、受け入れられる資料が僅か
(2)当館製作のDAISY図書は音声DAISYのみで、テキストDAISYやマルチメディアDAISYの製作は全くしていない
(3)DAISY製作着手してから完成まで早くても3か月、長いと1年以上かかる(製作期間の短縮)

(参考1)2010年1月:改正著作権法の障害者に関する部分のポイント


障害者の情報利用の機会の確保のための措置
■障害者のための著作物利用に係る権利制限の範囲の拡大
障害者のための著作物利用について,権利制限の範囲が,次のとおり拡大されました。(法第37条第3項,法第37条の2,令第2条,令第2条の2,規則第2条の2関係)
[1]障害の種類を限定せず,視覚や聴覚による表現の認識に障害のある者を対象とすること
[2]デジタル録音図書の作成,映画や放送番組の字幕の付与,手話翻訳など,障害者が必要とする幅広い方式での複製等を可能とすること
[3]障害者福祉に関する事業を行う者で政令で定める者(視聴覚障害者情報提供施設や大学図書館等を設置して障害者のための情報提供事業を行う者や,障害者のための情報提供事業を行う法人等のうち文化庁長官が定める者)であれば,それらの作成を可能とすること

(参考2)著作権法


第五款著作権の制限
第三十三条の二教科用拡大図書等の作成のための複製等
第三十七条視覚障害者等のための複製等
第三十七条の二聴覚障害者等のための複製等

(視覚障害者等のための複製等)
第三十七条公表された著作物は、点字により複製することができる。
2.公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
3.視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

(参考3)著作権法施行令第2条第1項各号に定める図書館


(視覚障害者等のための複製等が認められる者)
第二条法第三十七条第三項 (法第八十六条第一項 及び第三項 並びに第百二条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。

一.次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)

イ.児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 の障害児入所施設及び児童発達支援センター
ロ.大学等の図書館及びこれに類する施設
ハ.国立国会図書館
ニ.身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項 の視聴覚障害者情報提供施設
ホ.図書館法第二条第一項 の図書館(司書等が置かれているものに限る。) ※地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)
ヘ.学校図書館法 (昭和二十八年法律第百八十五号)第二条 の学校図書館 ト.老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
チ.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項 に規定する障害者支援施設及び同条第一項 に規定する障害福祉サービス.事業(同条第七項 に規定する生活介護、同条第十二項 に規定する自立訓練、同条第十三項 に規定する就労移行支援又は同条第十四項 に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設

二.前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項 に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの

(参考4)
全国視覚障害者情報提供施設協会「サピエ図書館」と国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」


大阪府立中央図書館杉田正幸

1. 視覚障害者情報提供ネットワークシステム「サピエ」とは?


視覚障害者及び視覚による表現の認識に障害のある方々(個人会員・無料)と、視覚障害者情報提供施設(点字図書館)や公共図書館など(施設会員・有料)が対象。 点字、DAISYデータを始めとする図書情報、地域・生活情報などさまざまな内容を提供するネットワーク。

2. サピエの歴史


1988年 日本IBMが「IBMてんやく広場」を開始
1993年 「てんやく広場」に改名
1994年 総会にて正式オープン(個人会員・関係団体へネットワークを解放)
1995年 オンラインリクエスト(ネットワークによる相互貸借)試行開始
1998年 「ないーぶネット」に改称
以降操作性やアクセスのスピードアップをはかっていく
2001年 「インターネット版ないーぶネット」(総合ないーぶネット)開始
2004年 点字・録音図書ネットワーク配信システム「びぶりおネット」開始
2010年 視覚障害者情報総合システム「サピエ」運用開始
2014年 国立国会図書館の「視覚障害者等用データの収集および送信サービス」で収集した公共図書館製作の点字データとDAISYデータが「サピエ」からも利用可能となる
・「サピエ」は、日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行い、日本ライトハウス情報文化センター(西日本)とラビット(東日本)がサポートセンターを受託
・「ないーぶネット」と「びぶりおネット」の特徴を併せ持つサービス

3. 「サピエ図書館」で提供されるサービスについて


(1) 検索
(2) オンラインリクエスト
(3) DAISYデータストリーミング
(4) 点字データ、DAISYデータダウンロード

4. サピエの利用者数・登録施設数(2017年4月現在)


(1) 個人会員:15,273名
※視覚障害以外の読書障害(B会員)315名、B会員を受入可能な施設129
(2) 施設団体(登録施設・団体数):348
※点字図書館86、公共図書館165、大学図書館5、盲学校20、ボランティア団体46、その他26
(3) 大阪府内の公共図書館の中でサピエに加入している図書館(13館):大阪市立中央図書館、豊中市立岡町図書館、池田市立図書館、吹田市立千里山・佐井寺図書館、茨木市立中央図書館、枚方市立中央図書館、大阪府立中央図書館、松原市民図書館、藤井寺市立図書館、河内長野市立図書館、大阪狭山市立図書館、岸和田市立図書館、貝塚市民図書館

5. サピエ図書館で利用可能な資料の数(2017年4月現在、単位はタイトル)


(1) 総目録数:677,446
(2) コンテンツ数:点字データ:188,358、音声DAISY:73,169、テキストDAISY:4,182、マルチメディアDAISY:143
※上記のコンテンツ数には、国立国会図書館の「視覚障害者等用データの収集および送信サービス」で収集した国立国会図書館と全国54館の公共図書館等の点字データ286、DAISYデータ11,928(2017年5月9日現在)は含みません。

6. 国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス(2017年5月9日現在)


(1)コンテンツ数:DAISYデータ及びプレーンテキストデータ12,075タイトル(音声DAISY 11,902タイトル・マルチメディアDAISY 26タイトル・プレーンテキスト 147タイトル)、点字データ286タイトル
(2)データ送信承認館( 82館):大阪府内は池田市立図書館、大阪府立中央図書館、河内長野市立図書館、吹田市立千里山・佐井寺図書館、高槻市立小寺池図書館、高槻市立中央図書館、羽曳野市立陵南の森図書館、枚方市立中央図書館の8館
(3) データ提供館( 54館):大阪府内は池田市立図書館、大阪市立中央図書館、大阪府立中央図書館、河内長野市立図書館、吹田市立千里山・佐井寺図書館、高槻市立小寺池図書館、羽曳野市立陵南の森図書館、枚方市立中央図書館の8館。
(4) 個人利用者(国立国会図書館に障害者登録している登録利用者):183名
※「データ送信承認館」は、国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスで利用可能な国立国会図書館と全国の公共図書館、大学図書館、盲学校図書室等のDAISYデータ、点字データ、プレーンテキストデータを利用することが可能な施設(ダウンロードして貸出、来館した利用者が使うことを想定)。
「データ提供館」は、国立国会図書館とデータ提供館が覚え書きを交わし、データ提供館が製作したDAISY図書や点字データを国立国会図書館に提供(サーバーに直接登録またはCD-ROMなど媒体で貸出)し、国立国会図書館がサーバーに登録し、データ送信サービスにて利用可能とする。2014年6月3日からは国立国会図書館からだけでなく、サピエ図書館からもこれらデータが利用可能。

自己紹介


過去の履歴は視覚障害者の情報環境(2014年6月 講演を参照。

現在の活動:
日本図書館協会 障害者サービス委員会・関西小委員会 委員長
公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)西部支部長
近畿視覚障害者情報サービス研究協議会(近畿視情協)運営委員
日本障害者リハビリテーション協会のパソコンボランティア指導者養成事業「障害者へのICT活用研修会」(通常研修・視覚障害)の講師
視覚障害者のWindows活用ML管理者
サピエと読書なんでもML(愛称:サピ読)管理者
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Facebookグループ「図書館の障害者サービス」

「大阪府立中央図書館におけるDAISY図書の活用」 大阪府立中央図書館 2017年5月28日 11:00-11:30 伊藤忠記念財団・大阪府立中央図書館共催「読書バリアフリー研究会」
URL: http://www.j7p.net/ronbun/20170528dokusyo.html
掲載日:2017年5月27日  最終更新日:2017年5月28日