5-10フリーソフト・シェアウェアのスクリーン・リーダーへの対応
6.ウインドウズ及びPC-Talker、ホームページ・リーダーの主なショートカット
視覚障害者の二つの障害として「移動の不自由」と「情報障害」が挙げられる。「情報障害」は活字情報をそのままの形で読み書き出来ない視覚障害者にとって長年の問題であった。しかし、パソコンの普及とスクリーン・リーダー(画面読み上げソフト)など各種支援技術の進歩は視覚障害者の情報環境を大きく変えた。パソコンによる文字の読み書き、インターネットからの情報入手、電子メールによる情報交換、スキャナーなどを使った活字情報へのアクセス、これらは視覚障害者が得られる情報量を大きく変えた。
現在、パソコンを利用出来る視覚障害者は少しずつ増えているものの、自らパソコンを使えるようになるまでには周囲の支援・サポートが必要である。市町村の教育現場でも今後、視覚障害者に関するパソコン支援の取り組みが進み、一人でも多くの障害者がパソコンを使い、情報を発受できるよう取り組んで頂ければと考える。
視覚障害者がパソコンを使用する場合、一般的に特殊なパソコンを使うのではと思われてしまうことが多い。しかし、パソコンは健常者の人が用いるパソコンと同じものが使用出来る。視覚障害者がパソコンを用いる場合は、市販のパソコンにスクリーン・リーダー(画面読み上げソフト)、画面拡大ソフト、音声ブラウザなどを導入して使用することになる。なお、現在、これらの環境はWindows環境のみ実現されており、Macintosh環境は使用することが出来ない。
視覚障害者がパソコンを利用する際の特徴とパソコン購入の際の配慮についての主なものは次の4点である。
視覚障害者の中にはパソコンの画面情報を音声だけでなく点字出力を併用して利用する人も多くいる。また、盲ろう者など音声でのパソコン利用が困難な人は点字出力を利用する。そのために点字表示装置「点字ディスプレイ」(点字ピンディスプレイ、ピンディス)がある。点字ディスプレイは、カーソル行の、あるいは、ポインター位置の文字がピンの凹凸で提示されるようになっている。この装置を使うには、その出力をサポートするソフトウェアと組み合わせてコンピュータから利用される。1台50万円前後の機種が中心で個人での購入は難しいが、盲ろう者は日常生活用具給付制度で補助を受けられる。
この他、点図表示装置としてケージーエス株式会社からドット・ビュー DV-1とDV-2が、点字電子手帳としてブレイルメモ BM16とBM24が発売されている。
点訳ソフトや自動点訳ソフトで作成した電子化された点字文書を打ち出す為の装置。個人で用いるような1台30万円台のものから業務用に用いる1台数百万円のものまである。中には点図を打ち出す機能を持ったものもある。
音声読書機はパソコンがなくとも、印刷された活字文書を音声で読み上げることの出来る単体の機器。読書機の上に印刷物を置き、本体の数個のキー操作で印刷物の読み上げを行うことが出来る。
DAISY(Digital Accessible Information System,デイジー)は国際的な録音図書の標準企画である。1枚のCDに数十時間の録音図書を格納でき、見出し、ページ移動、しおりを付けるなどの機能があり、それらの情報に自由にアクセスできるので、検索性の高い録音図書である。最近では、音声のみの録音図書でなく、テキストや画像も含んだマルチメディアDAISYも普及しており、視覚障害者だけでなく、学習障害(LD)や知的障害、その他、活字のままで読書が困難な人にも利用されている。
DAISYはここで紹介する専用の再生機を用いて聞くことが一般的であるが、パソコン用の再生ソフトも数種類ある。
スクリーン・リーダーは、主に視覚障害者用に開発されたパソコンの画面を音声で読み上げるソフト。文書の本文を読み上げる他、ファイルのオープンやクローズ、メニューやダイアログ項目、アプリケーションが表示するメッセージ、入力内容など、画面上のさまざまな情報を、合成音声で読み上げることができる。スクリーン・リーダーでパソコン画面を全て操作できるのではなく、アプリケーションによっては音声対応出来ないものもある。
スクリーン・リーダーとインターネットエクスプローラの組み合わせでインターネットの音声読み上げが可能であるが、視覚障害者に使いにくい面も多い。そこで、ウェブでの操作に特化した音声ブラウザがここで紹介するソフトウェアである。音声ブラウザでは、ウェブページ中のテキストや画像などに付けられた代替テキストを音声で読み上げることができる。
この内、ホームページ・リーダーでは、通常のテキストを男性音で、リンク部分を女性音で読み上げる。Javaスクリプト対応、フレームページ対応、表組の読み上げなどに対応している他、弱視者向けフォントサイズ変更やハイコントラスト表示への対応、効率的なナビゲーション機能(ジャンプ読み上げ、早送り読み上げ、ページ情報機能)などがある。
弱視や高齢者などで、画面のメニューやボタン、文字を拡大する場合に使用する。背景を黒にして白や黄色で文字を表示する方が見やすい人用に、画面反転機能の付いた製品もある。マイクロソフトのWindowsには標準で簡易画面拡大ツール「拡大鏡」が付属する。
アウトルックなど一般のメールソフトもスクリーン・リーダーで利用可能であるが、ここで紹介するソフトは特に視覚障害者用に開発された音声読み上げに特化したメールソフトである。
スクリーン・リーダーと市販の活字OCRソフトの組み合わせで活字情報を読み上げ可能であるが、視覚障害者に使いにくい面も多い。そこで、音声読み上げに特化した活字OCRソフトがここで紹介するソフトウェアである。スキャナーの上に置いた活字図書や印刷物をパソコンの簡単なキー操作で読み込み、結果を音声で読み上げてくれる。
点訳ソフトは点訳ボランティアがパソコン点訳をする際に用いるソフトで、6点またはローマ字、仮名、英数入力を行うことで点字文書を作成したり、点字プリンターを用いて点字印刷するソフト。視覚障害者は、点訳された点字図書データをパソコンを用いて読む人も増えており、その際、点字ディスプレイを用いて読んだり、音声出力を頼りに聞くことになる。ないーぶネットなどインターネット上の点字データをダウンロードし、上記の方法で点訳ソフトを用いて利用するケースが増えている。
自動点訳ソフトは漢字仮名混じり文書を分かち書きされた点字データに変換したり、変換結果を点字プリンターを用いて点字印刷する為のソフト。テキストデータはもちろん、WordやHTML文書、PDF文書も点字に変換することの出来るソフトもある。点訳結果は完全とは言えず、専門家が点訳ソフトなどを用いて誤字のチェック、点字表記(升空け)のチェックが必要となる。
視覚障害者専用のソフトとして、その他には、音声ワープロソフト、住所録・宛名書きソフト、キーボード練習ソフトなどがある。下記にその主なものを紹介する。
ソフト名 | 発売元 | 種別 |
---|---|---|
MYWORDX | 株式会社高知システム開発 | 音声ワープロソフト |
でんぴつ for Windows Ver.4 | ニュー・ブレイル・システム株式会社 | 音声ワープロソフト |
アドボイスV | 株式会社高知システム開発 | 住所録・宛名書きソフト |
ないーぶリーダー | イネーブルソフト株式会社 | ないーぶネット専用アクセスソフト |
ウチコミくん3D | 株式会社ネットイン京都 | キーボード練習ソフト |
キーぼうず | 合資会社 風の杜工房 | キーボード練習ソフト |
スパルタイプ | 株式会社アメディア | キーボード練習ソフト |
市販のソフトの中にもスクリーン・リーダーで十分利用出来るソフトは多くある。下記にその主なものを紹介する。
ソフト名 | 発売元 | 種別 |
---|---|---|
Word | マイクロソフト株式会社 | ワープロソフト |
WZエディタ Ver.5.0 | 株式会社ビレッジセンター | 文書作成(エディタ) |
Excel | マイクロソフト株式会社 | 表計算ソフト |
宛名職人2005 | ソースネクスト株式会社 | 住所録・葉書作成ソフト |
e.Typist Ver.10.0 | メディアドライブ株式会社 | 活字OCRソフト |
フリーソフト・シェアウェアの中にもスクリーン・リーダーで十分利用出来るソフトは多くある。これらのソフトの中には視覚障害者の音声対応への強い要望に応えてスクリーン・リーダー対応を図ったものも多くある。下記にその主なものを紹介する。
ソフト名 | 発売元 | 種別 |
---|---|---|
MMエディタ | 宮崎嘉明 | 文書作成(エディタ) |
SARI | Kazusoft | 文書作成(エディタ) |
秀丸エディタ | 斉藤秀夫 | 文書作成(エディタ) |
鶴亀メール | 斉藤秀夫 | メールソフト |
Winbiff | 株式会社オレンジソフト | メールソフト |
ニュース to Speech | 桂木範 | ウェブサイトのニュース読み上げソフト |
MMニュース | 宮崎嘉明 | ウェブサイトのニュース受信ソフト |
もっとニュースリーダー | よし | ウェブサイトのニュース読み上げソフト |
ネット辞典リーダー | よし | ウェブサイトの辞書検索ソフト |
LpPlayer 日本語版 | 財団法人日本障害者リハビリテーション協会 | デイジー図書再生ソフト |
AMIS 日本語版 | 財団法人日本障害者リハビリテーション協会 | デイジー図書再生ソフト |
機能 | キーの割り当て |
---|---|
スタートメニューを開く | ウインドウズまたはコントロール+エスケープ |
デスクトップを開く | ウインドウズ+D |
トップメニューに移動 | オルト |
スタートメニューを閉じるダイアログボックスを閉じるサブメニューを閉じるコンテキストメニューを閉じる | エスケープ |
タスクの切替 | オルト+エスケープ |
ダイアログボックス内での項目間の移動 | タブ |
項目間を逆移動 | シフト+タブ |
タブの切替 | コントロール+タブ |
コントロール+タブの切替方向が反対になる | シフト+コントロール+タブ |
アプリケーションの終了 | オルト+ファンクション4 |
選択したファイルやフォルダのごみ箱への移動 | デリート |
すべてを選択 | コントロール+A |
コピー | コントロール+C |
検索 | コントロール+F |
ジャンプ | コントロール+G |
新規作成 | コントロール+N |
開く | コントロール+O |
印刷 | コントロール+P |
上書き保存 | コントロール+S |
貼り付け | コントロール+V |
切り取り | コントロール+X |
繰り返し | コントロール+Y |
元に戻す | コントロール+Z |
文書の先頭に移動 | コントロール+ホーム |
文書の終わりに移動 | コントロール+エンド |
一画面上に移動 | ページアップ |
一画面下に移動 | ページダウン |
行頭に移動 | ホーム |
行末に移動 | エンド |
ヘルプ | ファンクション1 |
名前の変更 | ファンクション2 |
検索時に、同様の条件でもう一度検索 | ファンクション3 |
検索時に、同様の条件で逆方向に検索 | シフト+ファンクション3 |
最新の情報に更新 | ファンクション5 |
機能 | キーの割り当て |
---|---|
アクティブウィンドウの読み上げ | コントロール+オルト+1 |
起動中の全タスクタイトルの読み上げ | コントロール+オルト+2 |
起動中のタスク数の読み上げ | コントロール+オルト+B |
ダイアログボックス内の文字情報を1行ずつ読み上げ | コントロール+オルト+上下矢印 |
ダイアログボックス内の文字情報を1文字ずつ読み上げ | コントロール+オルト+左右矢印 |
直前の読みの読み返し | コントロール+オルト+R |
1行読み上げ | コントロール+オルト+J |
行頭からカーソル位置まで読み上げ | コントロール+オルト+H |
カーソル位置から行末まで読み上げ | コントロール+オルト+K |
カーソル位置の読み上げ | コントロール+オルト+ファンクション9 |
カーソル位置の文字の詳細読み上げ | コントロール+オルト+M |
カーソル位置から全文読み上げ | コントロール+オルト+ファンクション10 |
現在時刻の読み上げ | コントロール+オルト+8 |
日付の読み上げ | コントロール+オルト+Y オルト+V |
音声出力の一時停止と再開 | コントロール+オルト+ファンクション2 |
PC-Talker XPの終了 | コントロール+オルト+ファンクション3 |
PC-Talker XPの再起動 | コントロール+シフト+ファンクション3 |
読み上げ音声の中断 | シフトエスケープ |
機能 | キーの割り当て |
---|---|
再生 | スペース |
読み上げの停止 | コントロール |
次の項目 | 右矢印 |
現在の項目 | 下矢印 |
前の項目 | 左矢印 |
現在の項目の先頭に移動 | ホーム |
現在の項目の最終に移動 | エンド |
リンク又はデータ入力 | エンター |
次のリンク又はデータ入力領域 | タブ |
前のリンク又はデータ入力領域 | シフト+タブ |
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ページを最新の情報に更新 | ファンクション5 コントロール+R |
現在位置確認 | オルト+ファンクション1 |
キー操作ガイド - 要約 | シフト+ファンクション1 |
ページの先頭 | コントロール+ホーム |
ページの最後 | コントロール+エンド |
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音声スピードダウン | オルト+ページダウン |
アドレスバーと各表示との間でフォーカス移動 | ファンクション6 |
現在の表示と読み上げモードの通知 | コントロール+ファンクション6 |
視覚障害者は全国に30万人いると言われているが、パソコンを十分に使いこなしている視覚障害者は1万人を越える程度と言われている。それは市町村での視覚障害者を支援する人材の養成が不十分であり、その結果から視覚障害者がパソコンを学ぶ機会が少ないことが大きな問題と考えられる。視覚障害者のパソコン利用を支援する人材の養成が今後の視覚障害者が情報障害者にならない為の、最大の課題であると言えよう。