現場図書館職員のためのウェブアクセシビリティの基礎
―伝わるウェブからの情報発信―
2018年11月21日
杉田正幸
(大阪府立中央図書館、日本図書館協会障害者サービス委員会関西小委員会委員長、日本図書館協会認定司書第1138号)
0. 当日のサンプルなど(下にも同じリンクあり
1. 日本図書館協会のガイドラインでのウェブアクセシビリティの位置付け
日本図書館協会「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」
5 基礎的環境整備→(7)アクセシブルな図書館ホームページ・広報等
@アクセシブルな図書館ホームページ:作成においてはJIS規格「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」を参照
2. JIS X 8341-3:2016の概要と経緯
『JIS X 8341-3:2016』は、高齢者や障害のある人を含む全ての利用者が、使用している
端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている日本工業規格。そのためにウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として、レベルA(最低レベル)、レベルAA、レベルAAA(最高レベル)という3つのレベルの達成基準が定められている。
2−1 JIS X 8341の明細
- JIS X 8341-1 第1部:共通指針
- JIS X 8341-2 第2部:パーソナルコンピュータ
- JIS X 8341-3 第3部:ウェブコンテンツ
- JIS X 8341-4 第4部:電気通信機器
- JIS X 8341-5 第5部:事務機器
- JIS X 8341-6 第6部:対話ソフトウェア
- JIS X 8341-7 第7部:アクセシビリティ設定
2−2 経緯
- 2004年6月、『JIS X 8341-3:2004』が制定。
- 2008年12月、『WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.0』がW3C勧告に。
- 2010年8月、『WCAG 2.0』を包含する形でJIS X 8341-3が改正され『JIS X 8341-3:2010』に。
- 2012年10月、『WCAG 2.0』がそのまま『ISO/IEC 40500:2012』に。
- 2016年3月22日、『WCAG 2.0』がISO/IECの国際規格になったことを受けて、その一致規格となるように改正され『JIS X 8341-3:2016』に。
- 2016年4月20日、総務省が「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(旧:運用モデル)を公表。
2−3 JIS X 8341-3:2016の閲覧と購入
閲覧だけであれば以下のページで無料でできますが、印刷はできませんので、その場合には購入が必要。
2−4 規格の構成
1 知覚可能の原則
1.1 代替テキストのガイドライン
1.1.1 非テキストコンテンツの達成基準(レベルA)
1.2 時間依存メディアのガイドライン
1.2.1 音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準(レベルA)
1.2.2 キャプション(収録済み)の達成基準(レベルA)
1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準(レベルA)
1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準(レベルAA)
1.2.5 音声解説(収録済み)の達成基準(レベルAA)
1.2.6 手話(収録済み)の達成基準(レベルAAA)
1.2.7 拡張音声解説(収録済み)の達成基準(レベルAAA)
1.2.8 メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準(レベルAAA)
1.2.9 音声だけ(ライブ)の達成基準(レベルAAA)
1.3 適応可能のガイドライン
1.3.1 情報及び関係性の達成基準(レベルA)
1.3.2 意味のある順序の達成基準(レベルA)
1.3.3 感覚的な特徴の達成基準(レベルA)
1.4 判別可能のガイドライン
1.4.1 色の使用の達成基準(レベルA)
1.4.2 音声の制御の達成基準(レベルA)
1.4.3 コントラスト(最低限レベル)の達成基準(レベルAA)
1.4.4 テキストのサイズ変更の達成基準(レベルAA)
1.4.5 文字画像の達成基準(レベルAA)
1.4.6 コントラスト(高度レベル)の達成基準(レベルAAA)
1.4.7 小さな背景音,又は背景音なしの達成基準(レベルAAA)
1.4.8 視覚的提示の達成基準(レベルAAA)
1.4.9 文字画像(例外なし)の達成基準(レベルAAA)
2 操作可能の原則
2.1 キーボード操作可能のガイドライン
2.1.1 キーボードの達成基準(レベルA)
2.1.2 キーボードトラップなしの達成基準(レベルA)
2.1.3 キーボード(例外なし)の達成基準(レベルAAA)
2.2 十分な時間のガイドライン
2.2.1 タイミング調整可能の達成基準(レベルA)
2.2.2 一時停止,停止及び非表示の達成基準(レベルA)
2.2.3 タイミング非依存の達成基準(レベルAAA)
2.2.4 割込みの達成基準(レベルAAA)
2.2.5 再認証の達成基準(レベルAAA)
2.3 発作の防止のガイドライン
2.3.1 3回のせん(閃)光,又はしきい(閾)値以下の達成基準(レベルA)
2.3.2 3回のせん(閃)光の達成基準(レベルAAA)
2.4 ナビゲーション可能のガイドライン
2.4.1 ブロックスキップの達成基準(レベルA)
2.4.2 ページタイトルの達成基準(レベルA)
2.4.3 フォーカス順序の達成基準(レベルA)
2.4.4 リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準(レベルA)
2.4.5 複数の手段の達成基準(レベルAA)
2.4.6 見出し及びラベルの達成基準(レベルAA)
2.4.7 フォーカスの可視化の達成基準(レベルAA)
2.4.8 現在位置の達成基準(レベルAAA)
2.4.9 リンクの目的(リンクだけ)の達成基準(レベルAAA)
2.4.10 セクション見出しの達成基準(レベルAAA)
3 理解可能の原則
3.1 読みやすさのガイドライン
3.1.1 ページの言語の達成基準(レベルA)
3.1.2 一部分の言語の達成基準(レベルAA)
3.1.3 一般的ではない用語の達成基準(レベルAAA)
3.1.4 略語の達成基準(レベルAAA)
3.1.5 読解レベルの達成基準(レベルAAA)
3.1.6 発音の達成基準(レベルAAA)
3.2 予測可能のガイドライン
3.2.1 フォーカス時の達成基準(レベルA)
3.2.2 入力時の達成基準(レベルA)
3.2.3 一貫したナビゲーションの達成基準(レベルAA)
3.2.4 一貫した識別性の達成基準(レベルAA)
3.2.5 要求による変化の達成基準(レベルAAA)
3.3 入力支援のガイドライン
3.3.1 エラーの特定の達成基準(レベルA)
3.3.2 ラベル又は説明の達成基準(レベルA)
3.3.3 エラー修正の提案の達成基準(レベルAA)
3.3.4 エラー回避(法的,金融及びデータ)の達成基準(レベルAA)
3.3.5 ヘルプの達成基準(レベルAAA)
3.3.6 エラー回避(全て)の達成基準(レベルAAA)
4 堅ろう(牢)(Robust)の原則
4.1 互換性のガイドライン
4.1.1 構文解析の達成基準(レベルA)
4.1.2 名前(name),役割(role)及び値(value)の達成基準(レベルA)
5 適合
5.1 適合要件
5.1.1 適合レベル
5.1.2 ウェブページ全体
5.1.3 プロセス全体
5.1.4 技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法だけ
5.1.5 非干渉
5.2 適合表明(任意)
5.2.1 適合表明の必須要素
5.2.2 適合表明の任意要素
5.3 部分適合に関する記述−第三者によるコンテンツ
5.4 部分適合に関する記述−言語
引用:『JIS X 8341-3(ISO/IEC 40500) 高齢者・障害者等配慮設計指針−
情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ』 平成28年 3月22日 日本規格協会より
2−5 JIS X 8341-3:2016について詳しく知るには
2−6 みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)について詳しく知るには
「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」は、公的機関がウェブアクセシビリティの確保・向上に取り組む際の手順等を解説したガイドライン。
3. ウェブアクセシビリティのチェックツール
以下のようなチェックツールを用いることでホームページが障害者に利用可能かJISに準拠して作られているかを確認することができる。
ただし、JISの2016年版に対応しているツールは現状では「miChecker (エムアイチェッカー)Ver.2.0」など少数で、今回ここで紹介するものも2010年版に合わせて作られたものが中心。
4. 図書館におけるウェブアクセシビリティ方針
図書館も自治体サイト内にあるため、その自治体の方針に従っているものが多いが独自にアクセシビリティ方針やアクセシビリティポリシーを掲載しているところもある。
以下のページには一部、自治体のページと全く同じものを使用していいるものもあるが、独自に作っているものもいくつかある。
5. 図書館ホームページ作成時におけるページごとの配慮
(1)トップページ
(2)利用案内
(3)障害者サービス
(4)行事案内
(5)会館カレンダー
(6)資料紹介・資料一覧・目録
(7)パスファインダー
(8)電子書籍・デジタルデータ
(9)携帯ページ・スマートフォンページ
(10)蔵書検索
(11)横断検索
(12)インターネット予約
(13)Eレファレンス
(14)問い合わせフォームや電子メールでの問い合わせ
(15)TwitterやFACEBOOKなどSNSでの情報提供
6. 図書館ホームページ作成時におけるファイル種別ごとの対応
(1)HTML
(2)テキストデータ
(3)PDFやWord・Excelなど
(4)画像
(5)動画・音声
(6)Flashやアニメーション
自己紹介
過去の履歴は視覚障害者の情報環境(2014年6月 講演を参照。
現在の活動:
日本図書館協会 障害者サービス委員会・関西小委員会 委員長
公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)西部支部長
近畿視覚障害者情報サービス研究協議会(近畿視情協)運営委員
日本障害者リハビリテーション協会のパソコンボランティア指導者養成事業「障害者へのICT活用研修会」(通常研修・視覚障害)の講師
視覚障害者のWindows活用ML管理者
サピエと読書なんでもML(愛称:サピ読)管理者
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Facebookグループ「図書館の障害者サービス」
0. 当日のサンプルなど(下にも同じリンクあり
「現場図書館職員のためのウェブアクセシビリティの基礎 ―伝わるウェブからの情報発信―」 国立国会図書館 2018年11月21日 15:30-16:45 障害者サービス担当職員向け講座
URL: http://j7p.net/pub/accessibility/
掲載日:2016年12月12日 最終更新日:2018年11月14日